毎日中国語を聞いている。ドラマもYouTubeも流している。単語も文法も勉強している。
それでも、ほとんど聞き取れない。
もしかして才能がないのかな。もっと努力が必要なのかな。そんな風に自分を責めていませんか?
実は、聞き取れないのは才能でも努力不足でもありません。初心者が必ずハマる構造的な原因 があるのです。そしてその原因を理解せずに闇雲に勉強を続けても、残念ながら効果は薄いままです。
この記事では、「なぜ聞こえないのか」を言語化し、今やっている勉強がムダにならない視点を整理していきます。自分がどこでつまずいているのかが分かれば、前に進む道筋が見えてきます。
① 単語を「知っている」と「聞こえる」は別
文字で知っているだけ問題
初心者が最も見落としがちなのが、この「知っている」の定義です。
- 見れば分かる
- でも聞くと消える
具体例
あなたは「不客气」(どういたしまして)という単語を知っています。教科書で見れば意味も分かります。でも、実際の会話で「búkèqi」と言われた瞬間、頭が真っ白になる。これは単語を「知っている」のではなく、文字として知っているだけ なのです。
なぜこうなるのか
- 拼音を見ないと認識できない
- 音と意味がつながっていない
- 目で覚えて、耳で覚えていない
単語学習の時に「見る・読む・書く」だけで「聞く」をスキップしていると、必ずこの問題に直面します。音と意味が脳内で直結していないため、聞いた瞬間に処理できないのです。
② 中国語の音は「一語一語」では聞こえない
実際は音がくっつく・崩れる
教科書や単語アプリで学ぶ発音は、一つ一つの単語を丁寧に発音したものです。しかし、実際の会話ではそんな風には話しません。
現実の中国語の音
- 四声が消える(軽声化)
- 弱くなる音がある
- 速くなると別物に聞こえる
具体例
- 不知道 → 教科書では「bù zhīdào」だが、実際は「buzhidao」のように軽く流れる
- 这么 → 「zhème」が「zhèm」のように聞こえる
- 是不是 → 「shì bu shì」が「shìbushi」のように繋がる
これが意味すること
教科書の発音 ≠ 実際の会話の音
つまり、単語を一つ一つ丁寧に覚えても、それが繋がって話される時の音を知らなければ、聞き取れなくて当然なのです。これは「慣れ」の問題ではなく、知識の問題 です。
③ 意味が分かっても「処理が追いつかない」
聞こえているのに理解できない状態
もう一歩進んだ学習者が陥るのが、この「処理速度」の問題です。
症状
- 1語ずつ日本語に訳しながら聞いている
- 文法構造を頭の中で分析している
- 聞いた瞬間に考え込んで止まってしまう
何が起きているのか
例えば、「我昨天去了北京」という文を聞いたとき、こんな思考回路になっていませんか?
- 「我」→ 私
- 「昨天」→ 昨日
- 「去了」→ 行った
- 「北京」→ 北京
- 頭の中で組み立て → 「私は昨日北京に行った」
この処理をしている間に、相手は次の文を話し始めています。そしてあなたは置いていかれます。
リスニングは反射スキル
母国語の日本語を聞く時、私たちは「訳す」ことも「分析する」こともしていません。聞いた瞬間に意味が脳に流れ込んできます。これが「反射」です。
中国語のリスニングも、最終的にはこの反射レベルまで持っていく必要があります。そして反射は、「ゆっくり考える練習」からは生まれません。
④ 聞き取れないのに「難しい素材」を使っている
背伸びしすぎ問題
「ネイティブの自然な中国語に触れるべき」というアドバイスを真に受けて、初心者のうちから難しすぎる素材に手を出していませんか?
よくある例
- 中国ドラマ
- ネイティブ向けYouTube
- ニュース・ラジオ
なぜダメなのか
初心者にとって、これらの素材は 音が多すぎます。
- 知らない単語が8割以上
- スピードが速すぎる
- 文脈が掴めない
このレベルの素材を聞いても、脳は「雑音」として処理してしまい、学習効果はほぼゼロです。「慣れるため」と思っても、慣れる前に挫折します。
適切なレベルとは
- 6〜7割は知っている単語
- ゆっくり、はっきり話されている
- 文章が短い(10〜20秒程度)
背伸びは成長ではありません。今の自分に合った素材を選ぶことが、最も効率的な上達法です。
⑤ 「聞き流し」だけでは伸びない
脳がサボる
「聞き流しがいい」という情報を信じて、通勤中や作業中にずっと中国語を流していませんか?
聞き流しの落とし穴
- BGM化している
- 意味を取りに行っていない
- 成長を実感しづらい
脳の仕組み
人間の脳は、意味を取る必要がない音を自動的にフィルタリングします。電車の音、エアコンの音、遠くの話し声。これらは「無視すべき雑音」として処理されます。
中国語の聞き流しも、集中して聞いていなければ、脳は同じように「雑音」扱いします。つまり、聞いているようで聞いていない のです。
聞き流しの正しい位置づけ
聞き流しは「補助」として有効です。ただし、それは「すでに学習した内容の復習」や「中国語の音に触れる時間を増やす」という目的に限られます。
聞き流しだけで新しい単語や表現を習得することは、ほぼ不可能です。
初心者がつまずく最大の勘違い
「聞いていればそのうち分かる」
ここまでの5つの原因に共通するのが、この勘違いです。
真実
- 量だけ増やしてもダメ
- 仕組みの理解が必要
- 正しい方法でなければ何時間聞いても伸びない
赤ちゃんは聞いているだけで言葉を覚えますが、大人の脳は違います。大人は理解と分析を伴った学習が必要です。
聞こえないのは普通
むしろ、初心者が中国語を聞き取れないのは 当たり前 です。上記の構造的な原因がすべて重なっているのですから。
大切なのは、「聞こえない自分はダメだ」と落ち込むことではなく、「どの原因でつまずいているのか」を把握し、適切な対策を取ることです。
今日から変えるべき聞き取り対策(超具体)
では、具体的にどう勉強すれば聞き取れるようになるのか。以下の手順を試してみてください。
おすすめの学習ステップ
1. 短い音声を使う(10〜20秒)
長い素材は禁止。まずは1〜2文だけの短い音声から始めましょう。
2. スクリプトを見る
音声を聞く前に、何を言っているのかテキストで確認します。意味も完全に理解しておきます。
3. 音読 → シャドーイング
- まずはテキストを見ながら音読(発音の確認)
- 次に音声に合わせて音読
- 最後にテキストなしで音声の後を追う(シャドーイング)
4. 同じ音声を何日も使う
これが最も大切です。新しい素材に次々と手を出すのではなく、同じ音声を何度も繰り返します。最低でも3〜5日は同じ音声を使いましょう。
新しい音声 = 成長ではない
「毎日新しい素材に触れている」ことに満足していませんか?実は、それは成長している感覚を得るための行動で、実際の能力向上には繋がりません。
本当の成長は、同じ音声を完璧に聞き取れるようになること から始まります。
「聞こえ始める」前に起きる変化
リスニング力が向上する過程では、「いきなり聞こえるようになる」わけではありません。その前に、いくつかの小さな変化が起きます。
成長のサイン
- 中国語っぽく聞こえ始める
最初は「何語かも分からない音」だったのが、「中国語だと分かる音」になります - 日本語と混ざる感覚
「我…私…去…行く…」のように、音と意味が混在して聞こえる瞬間が出てきます - 聞き取れないけど疲れる
集中して聞くと疲れるようになります。これは脳が処理しようとしている証拠です
これらはすべて成長のサイン
「まだ全然聞き取れない」と落ち込む前に、こうした小さな変化に気づいてください。あなたは確実に前進しています。
それでも伸びていない気がするとき
語学学習で最もつらいのが、この「伸びている実感がない」という状態です。
なぜ実感しにくいのか
- 数値で測れない
- 自己評価は低くなりがち
- 毎日少しずつの変化は気づきにくい
でも、考えてみてください。3ヶ月前のあなたは、今聞いている音声を全く聞き取れなかったはずです。今は、少なくとも「聞き取れない」と認識できるレベルまで来ています。
「聞き取れない」≠「ゼロ」
「聞き取れない」という状態にも、段階があります。
- 音として認識できない段階
- 中国語だと分かるが意味不明な段階
- 単語がいくつか拾える段階
- 文章の構造が見える段階
- だいたい理解できる段階
多くの人は「完璧に聞き取れる」を目指すあまり、自分が実は2→3に進んでいることに気づきません。
まとめ|原因が分かれば焦らなくていい
中国語が聞き取れない理由は、才能でも努力不足でもありません。
大切な3つのポイント
- 聞き取れないのは構造の問題
音と意味の結びつき、音の変化、処理速度など、段階的に克服すべき課題がある - 勉強法の順番の問題
難しすぎる素材や聞き流しに頼っていると、いつまでも伸びない - 正しい負荷が必要
短い音声を繰り返し、音読とシャドーイングで定着させる
聞き取れないことに焦る必要はありません。原因を理解し、適切な方法で練習すれば、必ず聞こえるようになります。
今日から、新しい素材を追い求めるのをやめて、一つの音声と深く向き合ってみてください。その小さな一歩が、あなたのリスニング力を確実に前進させます。

