教科書を読んだ。解説動画も見た。例文も覚えた。それでも使えない「了」。
中国語学習者なら誰もが一度は壁にぶつかるのが、この小さな「了」という文字です。教科書には「完了を表す」と書いてありますが、実際の例文を見ると完了じゃないものばかり。つけなくても通じる気がするし、つけると逆に変になることもある。
よくある悩み
- 「完了」って書いてあるのに、完了じゃない例文が多すぎる
- つけなくても通じる気がする
- つけると逆に変な文になる
この記事では、暗記に頼らず 「理解して使える」 ように「了」を整理していきます。文法用語は最小限に、実際の使用感覚を身につけられる解説を心がけました。
そもそも「了」は何者なのか?
了=時制ではない
まず、「了」について最も大切な前提をお伝えします。
- 日本語の「〜した」とは違います
- 英語の過去形(ed)とも違います
- 動詞の形を変えるものではありません
では「了」とは何なのか。一言で言えば、「変化が起きたことを知らせるマーク」 です。
「何かが終わった」だけでなく、「状態が変わった」「今までと違う」ことを相手に伝えるために使う記号のようなものだと理解してください。この視点を持つだけで、「了」の使い方が驚くほどクリアになります。
教科書の「完了」が分かりにくい理由
「完了=過去」と誤解しやすい
多くの教科書では「了=完了」と説明されています。これ自体は間違いではないのですが、この説明が初心者を混乱させる原因になっています。
よくある誤解
- ❌ 食べた = 吃了
- ❌ 行った = 去了
この対応だけを覚えると、後で必ず「事故」が起きます。なぜなら、「了」は日本語の過去形とは全く違う役割を持っているからです。
実際は「状態が変わった」
「完了」という訳語のせいで見落とされがちですが、「了」の本質は 「変化」 にあります。
例文で見てみましょう
- 下雨了。 Xià yǔ le.
(雨が降り始めた) - 天冷了。 Tiān lěng le.
(寒くなった)
これらの文には「完了」の要素がありません。それでも「了」が付いています。なぜなら、「雨が降っていない状態→降っている状態」「暖かい→寒い」という 変化 が起きたからです。
これが「了」の核心です。
動作の「完了」を表す「了」
動作が区切られたとき
もちろん、「了」は動作の完了を表すこともあります。ただし、それは「過去の出来事」というより、「その動作に区切りがついた」というニュアンスです。
例文
- 饭吃了。 Fàn chī le.
(ご飯は食べた) - 书看了。 Shū kàn le.
(本は読んだ)
ポイント
これらの文が伝えているのは「やった/やらなかった」という事実です。「いつ食べたか」「何回読んだか」という情報は含まれていません。
「食べるという動作が終わった」「読むという動作に区切りがついた」ことを示しているだけなのです。
状態の変化を表す「了」(ここが鬼門)
今までと違う状態になった
多くの初心者がつまずくのが、この「状態変化」の「了」です。でも、ここを理解できれば「了」の8割は攻略できたも同然です。
例文
- 我懂了! Wǒ dǒng le!
(分かった!)
※さっきまで分からなかった→今分かった - 他不来了。 Tā bù lái le.
(彼は来なくなった)
※来る予定だった→来ない状態に変わった - 我累了。 Wǒ lèi le.
(疲れた)
※元気だった→疲れた状態になった
イメージ
「完了」よりも 「切り替わった」 というイメージの方が実態に近いです。状態A から状態B へのスイッチが入った瞬間に「了」を使います。
文末の「了」と動詞の後の「了」は別物?
役割が違う
「了」には、動詞の直後に付くパターンと、文末に付くパターンがあります。厳密には役割が少し違います。
| 位置 | 役割 |
|---|---|
| 動詞+了 | 動作の区切り |
| 文末の了 | 状態変化の通知 |
例文で比較
- 我吃了。 Wǒ chī le.
(私は食べた)
※食べる動作に区切りがついた - 我吃了饭了。 Wǒ chī le fàn le.
(私はご飯を食べた)
※動詞の後+文末の両方(強調)
初心者のうちは、「動詞の後」と「文末」の厳密な区別にこだわりすぎなくて大丈夫です。どちらも「変化・区切り」を表すという共通点があることを押さえておけば十分です。
「了」を使わない方が自然な場面
いつも・習慣・事実
「了」は「変化」を表すので、逆に 変化がない場合は使いません。これを理解すると、「なぜここに了が無いんだろう?」という疑問が解消されます。
例文
- 我每天吃早饭。 Wǒ měitiān chī zǎofàn.
(私は毎日朝ごはんを食べる)
※習慣・日常的な事実 → 変化なし → 了不要 - 他在北京工作。 Tā zài Běijīng gōngzuò.
(彼は北京で働いている)
※継続中の状態 → 変化なし → 了不要
ポイント
変化がない = 了は不要。このシンプルな原則を覚えておきましょう。
初心者が混乱する「过」との違い
了 vs 过
「了」と並んで初心者を悩ませるのが「过(guò)」です。両方とも動詞の後ろに付きますが、意味が全く違います。
| 了 | 过 | |
|---|---|---|
| 意味 | 変化・区切り | 経験 |
| 回数 | 1回 | 過去に経験 |
| 今との関係 | 強い | 弱い |
例文で比較
- 我去过中国。 Wǒ qù guo Zhōngguó.
(私は中国に行ったことがある)
※経験を語っている。今中国にいるかは不明 - 我去了中国。 Wǒ qù le Zhōngguó.
(私は中国に行った)
※最近行った。行ったという事実が「今」と関係している
覚え方
- 「过」= 「〜したことがある」(経験)
- 「了」= 「〜した」(変化・区切り)
覚え方は「3パターン」だけでいい
複雑に見える「了」ですが、実は覚えるべきパターンは3つだけです。
パターン1:何かが終わった
- 吃了饭(ご飯を食べた)
- 看了书(本を読んだ)
パターン2:状態が変わった
- 下雨了(雨が降り始めた)
- 天黑了(暗くなった)
パターン3:今までと違うことを伝えたい
- 我懂了(分かった)
- 不行了(ダメになった)
迷ったら自問自答
「今と前、違う?」→ YESなら「了」
このシンプルな判断基準だけで、7〜8割のケースはカバーできます。
それでも使えなくてOKな理由
ここまで読んで、「やっぱり難しい…」と思った方に朗報です。
実は、完璧に使えなくても大丈夫
- ネイティブスピーカーでも省略することがあります
- 「了」が無くても通じなくなることは少ないです
- まずは聞き取れることの方が大事です
中国語の会話では、文脈から意味が十分に伝わることが多いので、「了」の有無で誤解が生じることはあまりありません。
大切なのは
「正しく使う」ことより、「感覚を育てる」 こと。
ネイティブの会話を聞いて、「あ、ここで了を使ってる」「ここでは使ってない」と気づく練習を繰り返すうちに、自然と身についていきます。
まとめ|「了」は敵じゃない
「了」は中国語学習者の永遠の悩みと言われますが、本質を理解すれば決して恐れるものではありません。
3つの重要ポイント
- 「了」は完了マーカーではない
「変化のサイン」だと理解する - 「今と前、違う?」で判断
変化があれば「了」、なければ不要 - 無理に使わなくていい
まずは感覚を育てることが大事
「了」を完璧に使いこなそうとするより、まずは「変化を表している」というコアイメージを持つこと。そして、実際の会話の中で少しずつ使い方を体得していくこと。
焦らず、一歩ずつ進んでいきましょう。「了」はあなたの敵ではなく、表現の幅を広げてくれる心強い味方なのですから。

